ステルス機を無力化する中国の量子レーダー

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量子もつれl効果の世界では距離によらず粒子間には相関が存在する。この現象(量子もつれ)の応用は量子計算機にとどまらない。原子時計や地磁気を頼りに飛ぶ鳥にも使われている。最新の応用はマイクロ波や光ビームに反射しない物体の検出に使う量子レーダー技術である。

 

量子計算機ではビットに相当するキュービット(qubit)を表現する粒子としてイオン化原子、鳥類の網膜ではラジカルペアと呼ばれる電子、量子レーダーでは、マイクロ波光子となる。ビットは2つの自由度(0, 1)であるがキュービットの自由度は3であり、中間のスピン状態をマイクロ波で制御できる。

 

 

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一方、フォトニクス(共振器オプトメカニクス分野)で使われる光とマイクロ波変換素子による光力学エネルギー変換器を使うと、従来のマイクロ波レーダーでは観測できなかった微弱な反射波を検出することができるようになる。

 

 

ステルス機はレーダー反射波を少なくするように形状が設計されていて、表面に電波吸収材が使われているため、反射断面積が小さい。しかし量子レーダー技術では照射波と反射波を独立した共振器オプトメカニクスで参照信号と反射信号の干渉を(干渉計の原理で)高感度に検出する。この原理(量子照明)は2013年に可視光に対して実証された後によりマイクロ波領域で使えるように改良された。

 

 

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米国空軍は1980年代に最初のステルス機F-117を配備してイラク戦争に使用して以来、B-2爆撃機や最新のF-22戦争機など一連のステルス機を整備し、圧倒的な空軍力を誇ってきたが、量子レーダー技術をロシア、中国が開発したことやチェコの研究グループが開発した「パッシブ検出技術」(注1)によって、ステルス機能を無力化されつつある。このことで米国空軍のステルス戦法に脆弱性をもたらし抑止力に影響を与える結果につながっている。

 

(注1)複数のレーダー照射やテレビ、ラジオ波の反射を複合的に利用して位置情報を得る技術。

 

 

中国は世界に先駆けて量子暗号衛星を打ち上げていることからわかるように、量子計算機、量子暗号研究の先端にいることは事実である。米国(日本)のステルス機が無力化すれば、もともとステルス機能と代償となっている運動能力の欠如によって、東アジアの制空権を失うことになるかもしれない。

 

ステルス機は探知されないことを前提として運動性能や最高速度に制限があるので、ステルス機能が無力すれば旧世代の戦闘機(例えばF-15など)に簡単に撃墜される恐れがある。