ISとTwitterの甘い関係

30.08.2016

Photo: extremetech

 

TwitterSNSFacebookTwitterGoogle+Youtubeなど)の中で、月間アクテイブユーザー数(MAU)が世界で12億を超すFacebookにつぐ2億の実績を誇る。しかしその人気の一方でストーカー犯罪や悪意の中傷に使われ社会問題となっている。また求人広告を出せないような犯罪集団が隠れて仲間を勧誘したり違法薬物の販売に使ったりと、便利なコミュニケーションの特徴が犯罪を助長している事実は否定できない。

 

ところでISは多くのSNSアカウントで情報を発信し戦闘員や支援に使っているが、特にTwitterがお気に入りのようだ。最近ではハッカー集団AnonymousISにサイバー攻撃による宣戦布告して話題となったが、この6カ月間は(ISが戦闘や物資補給の重要拠点を奪われただけでなく)、関連するTwitterアウント235,000が閉鎖され、軍事・広報両面で打撃を受けることとなった。

 

Twitterは今年初めに対スパムソフトによりISのテロ攻撃を扇動するサイトを自動的に特定する努力を行ってきた。その結果、今年初めにテロ対策として125,000のアカウントを閉鎖した。その後も世界各地でISによるテロ攻撃が続いたが過去6カ月で、235,000アカウントが閉鎖されている。1日あたりの閉鎖数は昨年に比べて8割増えたことでフォロアーの数は大幅に減少している。しかし新しいTwitterアカウントは数秒で開設できるから、効果は薄いのが現実である。

 

Twitterは「クオリテイ・フイルター」をユーザーに提供している。これはスパム性のある、あるいはテロなどの脅威となるメッセージをフイルターする機能で、これによりユーザーはテロ活動を助長するTwitterメッセージから保護される。Twitterではβ版で”Verified account”機能(下)も提供している。セレブや有名人の成りすましを防止するためだが、もしすべてのアカウントに適用すればテロ支援を含め犯罪防止に効果があるが、利用者数も激減するだろう。

 

 

Source: tweeterism

 

2015年から現在まで閉鎖されたアカウントは360,000件となるが、閉鎖されればまた別アカウントを開くのでISをネットから追放することはできない。ではISはどのようにTwitterを利用しているのだろうか。90,000Twitterアカウントは戦闘員を世界中から集めた他に、戦争のプロパガンダにも大きな役割を果たしている。

 

閉鎖されてもすぐ新しくサイトを開設できる現在のSNSではソフトウエアだけでは対応できない。欧州ではテロを呼びかけるTwitter1100,000件に達するという。Anonymousグループはパリで起きた爆弾テロの実行犯を突き止めると宣言している。しかしISは暗号化された情報通信をSNSで行うのでなかなか通信を根絶できていないのが実情である。Anonymousに対してもISは暗号化されたスマートフォンアプリTelegramを使って挑発している。

 

 

IS戦闘員募集の呼び掛けに応じて囮捜査は効果があるだろう。しかし最も効果があるのは他国からの資金援助ルートを断ち切ることである。昔から戦争が長引く原因は戦争を行う2国へ資金援助が続くせいだといわれる。IS根絶ができない背景には資金援助が続いていることにある。またSNSに身を隠すISを検挙するには、SNSの特徴(匿名性など)をある程度、犠牲にしなくてはならない時代が近いかもしれない。

 

TwitterのMAUは2010年から増大し続けてきたがさすがに、右肩上がりの時代はすでに終わった。これからSNSのユーザー奪い合いが本格化していく。生き残りをかけたTwitterはどういう路線にでるのか予想がつかないが、ISがメリットがないような安全性を追求するのが良いのかもしれない。