ドイツ銀行は破綻プロセスを止められるか Part1

14.10.2016

Photo: Daniel Roland/Agence France-Presse — Getty Images

 

 ドイツ銀行は収益の減少、収益性の低下、実施できる資本増強策が限定されているといった「悪循環」から抜け出すことができない事態にある。収益力の改善は見込めない状況が続くなか、資本基盤を強化することが極めて難しくなっている。

 

 投資家不安の緩和と資本増強のためにドイツ銀行は以下の対応策を行ってきた。

 

 

コスト削減

 コスト削減の強化の一環として、さらに1000人の人員削減と全ての事業部門における新規雇用の凍結を実施する予定である。この実施で約21億ドルの削減が見込まれるとしている。ボーナスの削減も検討中である。問題は、人員削減やボーナスのカート、新規雇用の凍結で、優秀な社員が競合相手に転職するリスクが高くなることである。収益性を上げるのには、優秀な人員を確保することが重要となる。

 

 

資産の売却

 ドイツ銀行は、リテールバンキング(小口金融部門)のポストバンクを売却、英国の保険部門のアビー・ライフを9月に93500万ポンド(約1220億円)で売却している。

 

 

社債発行

 ドイツ銀行は7日と12日に、それぞれ30億ドル(約3100億円)と15億ドル(約1545億円)の社債を発行した。無担保優先債の指標金利(米国債金利)に対する上乗せ幅は、2015年に発行した同類の社債より2倍以上に跳ね上がっている。ジャンク債の平均プレミアムと同じ条件である。2回の社債発行にあたっては、複数の同じ投資家が購入したとされる。

 

 

 

 今回の社債発行でドイツ銀行は、市場で大規模な資金調達がまだできることを示した。だが、高いプリミアム・コストの支払を続けられるかが問題である。

 

 

株式発行

 独紙ハンデルスプラットによれば、ドイツ銀行が増資を必要となった場合、ドイツの主要上場企業の一部は、救済として数十億ユーロの新規発行株式を買う用意があるとしている。しかし、株価が最安値であるため、一時的な応急処置にすぎない。新株発行増資により、一株あたりの価値が下がる、株式の希薄化で株価にさらにマイナスの影響を与える可能性が問題となる。資金の調達はでき、一時的に自己資本比率が改善されても、根本的な収益性、経営、財務の問題の解決策とはならない。