データベース化でビットコイン監視に動く中央銀行

05.08.2016

Photo: International Business Times 

 

 欧州委員会(EC)が仮想通貨やプリペイドカードの取引規制を検討しているなか、2日に香港のビットコイン取引所、ビットフィネックスでハッキングがあり、盗難時の時価で7200万ドル相当(日本円にして約73億円)のビットコインが顧客口座から盗まれた。この盗難事件で、ECは身元確認の認証や取引の追跡が可能となるユーザーの中央集権型データベースの開発に動きだすと見られる。

 

 

ビットフイネックスのビットコイン盗難

 ビットフィネックス(Bitfinex)は、香港に拠点を置く世界最大のドル建てビットコイン取引所である。盗難にあった11.9万以上のビットコインは、現在流通しているビットコインの約0.75%にあたるが、その被害額は2014年に経営破綻したマウントゴックスに次ぐ過去2番目に大きい。

 

 事件発覚をうけ、取引は全面停止し、原因究明と被害にあった顧客への損失補てんの処理を終えるまで取引再開はないとしている。そのため、ビットコイン価格は一時23%も下落した。ビットフィネックスは以前にも不法取引で米国のCFTC(注1)から75000ドルの懲罰を受けた過去がある。

 

(注1Commodity Future Trading Commission

 

 ビットコインなどの仮想通貨やプリペイドカードは、主要25ヵ国・地域の中央銀行、財務省、金融監督当局、証券取引委員会、IMF、国際決済銀行などの組織で形成されている金融安定理事会の監視下にある。

 

 

 

Source: CREANDUM

 

全世界に300か所あるビットコイン取引所はデータベース化されユーザーに公開されている(上図)が、それとは異なり今回のユーザー取引の監視に向けたデータベースは中央銀行の取引監視を意味する。データベース化は犯罪防止の目的とされるが、中央銀行に支配されない通貨として登場したビットコインの趣旨と相いれない監視強化が目的である。

 

 高額紙幣の廃止、現金廃止、キャシュレス化の動きと同様に、仮想通貨の取引規制も脱税、テロリストのマネーロンダリングを排除する一環の政策として進められている。ビットコインが犯罪に使われた例は報告されていないが、今回の盗難事件は仮想通貨の取引規制の強化に乗り出すきっかけになるかも知れない。

 

 国の通貨の「代替」として使われ、価値が国の金融政策や経済状況に左右されないビットコインが監視下にないことが中央銀行にとって脅威となっていた。ビットコインなど仮想通貨のユーザーの中央集権型データベースが実行されれば、仮想通貨取引の全てが中央銀行の監視下に置かれることになる。