中国の無人宇宙船が軌道上で制御不能

3.07.2016

Image: sinodefense

 

20119月に打ち上げられた中国の軌道上実験モジュール天宮1号(Tiangong-1)は独自に開発している宇宙ステーションのドッキング試験を行うものであった。しかし2013年に最後のドッキング試験を行った後、基地との交信が途絶え制御不能になっている。大気圏突入により大洋上空で燃え尽きさせる予定だったが、制御不良でデブリが陸上に落下する恐れがある。

 

専門家によれば天宮1号は落下地点は直前にならないと墜落地点の情報はわからないという。中国担当機関(CMSE)は制御不能の事実を公表していないが墜落地点を選ぶ可能性は残されているとする見方もある。CMSEの発表では重量8トンの天宮1号には宇宙空間と地球観測用の機材が積まれている。

 

Photo: pics-about-space

 

2014年にCMSEは天宮1号が2011年の無人宇宙船とのドッキング、2012年の有人宇宙船とのドッキングで、宇宙ステーション建設に必要な技術の習熟に大きな貢献をしたと発表した。また鉱物資源、森林と海洋観測で生態系と地球環境の調査もできたとしている。

 

目的を達成したためCMSE2016年に入って天宮1号の観測活動を中止することを決めた。CMSE担当者は同時に天宮1号との交信が途絶えているため、地球大気圏再突入の制御が完全にはできないことも認めた。しかし軌道を観測している専門家によれば、天宮1号が軌道高度を上げて高度低下が緩やかになった(下図)ことから、完全に制御不能な状態ではない。それでも精密な大気突入の制御ができなければ陸地にデブリが落下する可能性は否定できない。

 

天宮1号の最近の高度変化(下図)は高度をこれまでより上げたことを示している。これが高度低下率が増大し突入のリスクが高まったなのか注意していく必要がある。

 

 

 

Credit: T.S. Kelso