マイナス金利で増える現金保有

20.03.2016

Photo: investopedia

 

 日銀のマイナス金利導入による銀行預金への影響やマイナンバーの影響を懸念して、今年に入ってからタンス預金が激増している。その結果、家庭用金庫の売上が急増、現金を手元に置くため、日本人は金庫買いに卒倒していると米主要新聞が報じ、世界的に話題となった。ドイツでも同じような現象が起きている。ドイツの場合は預金から現金を引き出し、現金を貸金庫に保管している。

 

 

 

 欧州中央銀行(ECB)は10日に、中銀預金金利をマイナス0.3%から0.4%に引き下げたと同時に今後も金融政策のさらなる緩和を進めることを強調した。欧州では既に大口預金者や個人預金者に対し、マイナス金利を課す金融機関がある。ドイツでは、大口預金にマイナス金利を課しているため、現金を貸金庫に保管間するのは特に、中小企業の間で増加している。個人の預金者もその危機感から、現金を貸金庫に保管する人たちが増化している。

 

 

 世界第2位の再保険会社のミューニックリー社は、マイナス金利の対応策として、現金と金準備の保有を増やし、社内金庫に保管することを実験的に実施している。信用銀行、年金基金、再保険会社を含む機関投資家の間では、現金を保有するうえで、その保険費とロジスティクス上のコストをマイナス金利と比較してそのコスト・ベネフィットが議論されている。

 

 

 

 ミューニックリー社に続き、現金を保有する企業は増える傾向にある。銀行貸し出しを増やし、経済を活性化するECBの狙いとは反対の効果を引き起こしている。個人、企業、投資家が現金を保有することになると、銀行の収益悪化だけでなく、中央銀行の金融政策の失敗が鮮明となる。