ハンガリー首相は欧州のトランプか

22.03.2016

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共和党で指名争いのトップに立つドナルド・トランプは不法移民に対して厳しい措置を掲げ、米国内の集会に暴力的な移民が押しかけ騒動が続いている。彼のメキシコ系、イスラム系の不法移民に対する厳しい姿勢は、欧州の難民に対する締め出し政策を断行しているハンガリーのオルバン首相と相通じるものがある。

 

ハンガリーはEUの難民割り当て政策に「愚策」として断固反対している。オルバン首相はまたハンガリー国内の死刑制度を思想の自由と同じくらい自然なことであるとしている。オルバン首相はストラスブルグにあるEU議会でハンガリーの難民受け入れることを拒否する演説を行った。

 

オルバン首相によれば難民の受け入れを割り当てることが狂気とも言える「愚策」で、割り当て政策を実行すれば欧州への難民の数を増やすことになりかねないとしている。EUの難民割り当て計画は加盟国が妥当な数の難民を受け入れることと全体で20,000人の難民をさらに受け入れることを骨子としている。

 

シリア難民にとってハンガリーのセルビアとの国境に通じる線路が徒歩でハンガリーに入国できる唯一のルートである。ハンガリー政府は線路をフェンスで閉鎖したため行き場を失った難民たちとの対立が激しい。

 

 

 

 

オルバン首相の主張は(EUが経済共同体であっても)各国は国境の存続を守るべきだというもの。国内で議論が起こっている死刑制度の復活について、死刑制度復活を唱えることは思想や言論の自由と同様に保障されるべき問題としている

 

オルバン首相の主張は欧州リベラル派の反撥を招き、米国のトランプ対民主党勢力の対立構造に近い状況を作り出しつつある。死刑制度復活に反対する勢力はEUの難民割り当て政策の支持者でもあることから、難民政策と死刑制度復活を巡って国内世論が2分している。欧州議会の主張は難民割り当て政策はEUの問題で、加盟国の主権とは別次元であるとしているが、経済共同体であっても文化・慣習に影響を与える難民危機は国家の存在を否定することにもなりかねない。

 

ハンガリーはローマ帝国、オスマントルコ、ソ連に屈服し支配されてきた。キリスト教民主国民党など中道右派勢力の台頭で、難民排斥よりむしろ反イスラムの砦として危機意識が(スロヴァニア同様に)高いことがある。