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 5月12日からロンドンで、「腐敗対策サミット」が開催される。タックスヘイブン(租税回避地)に関する規制、企業や政府の透明性を追求するこの会議は1年前に計画されたが、パナマ文書で掲載されている個人や法人を検索できるデータベースが公開されたことで注目が集まる。

 

 

タックスヘイブンの根絶を求める動き

 サミットの参加者は世界40カ国から政府・民間関係者、世界銀行やIMF代表者たちである。開催を控え、2015年のノーベル経済学賞を受賞したアンガス・ディートン、『21世紀の資本』の著者トマ・ピケティ、『貧困の終演—2025年までに世界を帰る』の著者ジェフリー・サックスを含む世界33カ国から355人のエコノミストたちが署名したタックスヘイブンの根絶を求める公開書簡を発表した。

 

 今タックスヘイブンの問題が国際的な関心を集めているなか、15日から開催される伊勢志摩G7首脳会議の前に各国政府に圧力をかけるのが公開書簡の目的である。エコノミストたちの要求は、タックスヘイブンの根絶、腐敗や汚職を減らす対策に取り組むこと、企業は全ての海外拠点における課税対象となる営業収入の申告義務、企業や財団などの名義代表の情報公開といった税法改革の取り組みである。

 

 

タックスヘイブンの問題点

 エコノミストたちは、タックスヘイブンは「世界全体の富や福祉に貢献せず、経済的な有益性はない」と正当化できる理由がないこと主張している。富裕層や大企業などの資金が自国からタックスヘイブンに流出すれば、国の税収は減り、税金の公平性が失われ、格差問題の深刻化を招く。タックスヘイブンにおいて、オフショア法人を利用した資産隠し、脱税や課税の捜査の回避、犯罪関連の資金洗浄が行われており、当然ながらタックスヘイブンを利用する富裕層や多国籍企業だけが得をする制度でもある。

 

 

タックスヘイブンの拡大

 タックスヘイブンを利用する側は、活用を可能とする税法の抜け穴がなければ利用ができない。また資金の移転を可能とする銀行、会計事務所、法律事務所との協力体制が構築され、利用が合法的でなければならない。

 

 20世紀に入って、タックスヘイブンの数は増え、幅広く活用されるようになった。主にロンドンの金融機関は英国領のマン島、ジャージー島、バミューダ諸島、バージン諸島、ケイマン諸島、最近では香港、シンガポール、バハマ、バーレーン、ドバイなどイギリスの元植民地や保護国をタックスヘイブンとして活用してきた。

 

ヨーロッパには、もう一つのタックスヘイブン拠点としてベネルクス(ベルギー、オランダ、ルクセンブルグ)、アイルランド、スイス、リヒテンシュタインがタックスヘイブンとなった。それは、ヨーロッパには数多くの富裕層、多国籍企業が存在していたことに加え、EU市場の拡大、国際貿易や国際直接投資の拡大、グローバル化による国際金融取引の拡大などに伴って、活用が拡大した。その背景には英国の税法がタックスヘイブンの利用を可能としたことがある。英国の金融機関がタックスヘイブの利用を進めてきたとも言える。

 

 海外企業とのビジネスで、例えば海外合弁会社の設立に当たって、タックスヘイブンでのオフショア法人を設立すること自身は合法的である。しかし近年、タックスヘイブンにおけるオフショア法人の活用が機密にされていることから、資産隠し、脱税や課税の捜査の回避、犯罪関連の資金洗浄に利用されてきた。タックスヘイブンの根本的な問題解決には、国が税金の平等性を求める税制改革とタックスヘイブン利用者の情報の透明化を金融機関に求めることが重要な第一歩となる。